第2代 工場長養成塾 塾長 荒川雅裕(あらかわ まさひろ)
「工場長養成塾」は,平成17年度に経済産業省による製造中核人材育成事業の一つとして採択され,平成19年度からは名古屋工業大学主催により開講されています。名古屋工業大学主催による運用もすでに10年を超えており,これまでの参加者は447名,参加企業は157社となっています。毎年,受講生の1/3の企業がリピーターであるとともに,近年では食品業界や農業界などの幅広い業界からの参加者も増えています。このように10年以上に渡る運用はひとえに関係各位のご協力と参加企業の経営トップのご理解によるものであり,工場長養成塾の代表者として感謝の意を表します。
「工場長養成塾」では継続的に議論を重ね,カリキュラムの変更や教育方法の改良を進めており,今後も参加企業の人材育成に効果的な教育を提供していきます。今回,第16回の開講を迎えるにあたり,従来からカリキュラムの中心である“製造中核人材育成プログラム”では,より一層,現場での実践活動や現場に即した講義を受講生に提供します。
また,経営者候補を対象とする“経営中核人材育成プログラム”では,従来からの実務経験者による講師の方々とともに,一般社団法人静岡ビジネスアカデミーから3名の講師の方を迎え,講義と演習を充実させ,企業の経営運用に有効な知識を提供する予定です。
現在の国内製造業では少子高齢化による人手不足や技能者の技能伝承などの問題が急速に進んでいます。一方で,ロボット,IoT,人工知能の技術発展を背景に製造工場の改革が叫ばれており,各種情報システムによる運用の効率化の取り組みが避けられなくなっています。
しかしながら,数多くの現実場におけるこれらの取り組みを見渡しても,単なるシステムの導入だけ終わっているケースも少なくなく,十分な効果は得ることはできていない工場も見受けられます。工場での管理運用の知識に基づいて具体的な目的に沿ったしくみを構築・導入していなければ,導入後,一時的に良くなっても継続的な生産活動に繋がっていきません。また,働き方改革の導入によって,国内ではこれまで以上に作業者数を抑え,残業を増加させないなどの作業環境を構築する必要性が生じています。
このためには,従来からの生産管理や品質管理の技術だけではなく,製品設計,生産技術,経営戦略,情報システムによる分析などの他分野の技術を組み合わせて運用することが必要であり,そのためには他分野の技術情報を製造の管理に活かす視点で分析と対策を進められる知識と思考力が必要です。現在のコロナ禍の状況において,少ない人数で受注先の要求に満足させるためには現場改善だけではなく,今後何年にもわたり状況を分析して対策を発想できる人材の育成が不可欠と思われます。
「工場長養成塾」では,自社工場での改善活動や模擬ラインによる実習のほかに,生産管理や品質管理の講義や人間工学や心理工学,経営戦略などの多様な専門講義が用意されており,これらを通して,柔軟に問題を考える能力を養うことができるようにカリキュラムを構成しています。
各企業におかれましては,「第16回工場長養成塾」へ受講生を送り込まれることをご検討頂きますよう,宜しくお願い致します。
2022年6月1日
荒川 雅裕 名古屋工業大学大学院 社会工学専攻 教授